富士登山 4

前回「富士登山3」からの続き。

(思い出しながら書いていたら思った以上に長くなってしまいました。

次回で終わりにしたいと思います。💦)

9合目から頂上へ

「すいませーん、すいませーん」と後方から男性の声。

男性:「これからどういう予定で?」

なんで知らない人に自分の予定を知らせないといけないのか・・と一人だったから余計に警戒。

こんなところでナンパか??そうも思ったりした。

一応答える。

「頂上へ行って今日のうちに下山します」

男性:「懐中電灯は持ってますか?」

(もし借りたら高額請求されるかもしれない・・)

一人だったから変なとこ警戒していた。

今思えばあの男性はきっと山の警備をしていた関係の人だろうと思う。

(ナンパとは!💦)

懐中電灯を貸してくれようとしていたのに私はキッパリと「いいです!」と断った。

男性:「気をつけて下山してくださいね」と。

そして黙々と一人で頂上へ。

鳥居が見えて来た。

(もうすぐだ)

誰もいない頂上の古びた鳥居はこの世とあの世の境を感じさせるなんともいえない入り口のようにも見えた。

頂上

やっと頂上!

寒すぎる!!

季節は真夏だけど真冬の格好が必要だったと改めて大後悔。

今日本で一番高いとこにいるのは私だ!

頂上に私しかいない!これってすごいことだ!

一生懸命満喫しようとしたけど実際はとても不安で怖かった。

何が怖いって目の前の火口がデカすぎて怖い。

どこからともなく地響きするようなゴーーという音。

今、うっかり火口へ足を滑らせたら誰も助けてくれない。そんな諸々の恐怖。

そして郵便局があったのに驚いた。ここから手紙を書いて送れるようになっていた。でも夕方だったからもう閉まっていて誰もいない。

ちなみに今は頂上にも山小屋があるらしい。

当時の頂上には神社と郵便局、他には何もなかった。

寒いし、空はオレンジ色が濃くなり日が暮れ始めている。そして火口は怖いし、もう一人が怖すぎて20分くらいの滞在で下山することにした。

須走下山道

登山道とは違う下山道専用がいくつかあるのもここで初めて知った。

(どこから降りようか・・)

で、適当に降りた。

後にその適当に選んだ下山道で良かった。

須走下山道と言って道のほとんどが砂地でザクザク降りて行けるところ。

岩がたくさんある富士宮下山道だったら今ここにいなかったかもしれない。

しかし途中で別れる道がある。どっちに行こうか迷って案内板も暗くて読めない。なので適当に進んだ。結果、山梨側から登ったのに静岡側へ下りたことになった。

もし進んだ道と違う方向を選んでいたら元の山梨側へ進んでいたということが後からわかった。しかも山小屋もあった。😭(全ては調べなかった自分が悪いのです)

とにかくザクザク降りた降りた。ひたすらザクザクと。

空はだんだん暗くなる。焦る・・

そんな時、上から男性一人が下山して来るのが見えた。

この人がどんな人なのかちょっと怖いけど一人ではないという状況がだいぶホッとする。

だんだん距離が近づいてきて怖いけどホッとする。でも怖い。そんな複雑な感情。

そしていよいよ並んだ時に「こんにちは」と挨拶することなく、私を抜かしてどんどん降りていってしまった。

喉元まで「一緒に下山しませんか・・」って言いかけたが言えなかった。

そうだ、この人のペースについて行こう!そう思って頑張ったけどとても早くてどんどん離れてその人はとうとう見えなくなってしまった。

だいぶ歩いたと思って斜面を見下ろすと、まだまだ果てしなく続いているジグザグ道を見てクラクラきた。

そしてとうとう日が暮れて足元も見えないくらい真っ暗になった。

月の明かりだけが微かに頼り。

6合目で買った杖で先をツンツンしながら道を確認して少しづつ進む。

ツンツンしたところがスポンと何もないと斜面だとわかる。

危険。

この杖買って良かった、と改めて思った。

さっき9合目の途中であの男性の言う通りに懐中電灯を借りていれば、と大後悔した。

ナンパじゃなかった・・

下手に動いて斜面から滑落する危険もあることを思うとこのまま動かない方がいいのかもしれないと判断。

夜が明けるまで待とうと思った。

しかしとにかく寒い。

リュックを胸に当てて体を丸くするけど耐えられない。

少しづつでいいから前に進もうと思った。

杖で前をツンツンして道を確認しながら座頭市みたいになって進んでいたと思う。

すると近くでもなく、遠くでもないあたりからバイク?が通る音が聞こえた。

(道がある!)

そこまで行けば助けを求めることができる!と希望が見えた。

(今の時代だったら携帯で助けを求めていたと思う。当時は携帯なかった・・)

つづく。

(次回で終わりにしたいと思います。)

富士登山 3

富士登山 3

8合目へ

富士登山2からのつづき。

ほどよくお腹も満たされて、さあこれから8合目を目指してがんばるぞ!と飴を一つ口に入れて歩き始める。

ここがまたきつかった。

というより上に行けば行くほど勾配も急になっていくのでキツさが増す。

酸素もだんだん薄くなっていくので登山者の中には缶のような携帯できる酸素を取り出して呼吸している人もいた。

酸素は薄い、勾配はきつい、7合目から8合目はとても苦しかったのを覚えている。

(私は今日のうちに頂上へ行って下山して東京へ帰らなければならない)

今考えたらなぜ日帰りにこうもこだわっていたのか。もっと柔軟になれなかったのかと思う。

6合目で購入した杖がとても役に立っている。この杖なしには8合目まで行けなかったように思う。

こんなに苦しくて頂上まで行けるのか・・不安になった。

もう断念しようかと思いがよぎったが、せっかく早起きして来たんだし富士山来て頂上行かなかったら何の意味がある??しかも頂上すぐそこに見えてるし。

そんな風に思い直して振り絞って頑張ることにした。

杖に体重をかけながらヨレヨレになった仙人のように這って上へ行く。

あともうすぐで8合目。

周りの登山者も皆無言だった。

そしてようやく8合目到着。

倒れ込むように椅子に横になった・・少し休憩。

長椅子の上で仰向けになると空が広すぎて怖い。木や山や建物や鳥すら見えない空がこんなにも怖いというのを初めて知った。

そしてその空が少しオレンジ色になってきたのがさらに不安になった。

寒い・・。

リュックから薄手のパーカーと長袖のTシャツを着た。もうこれしか持ってなかった。

真冬のダウンジャケットくらいの厚手の上着が必要だったとこの時点で後悔した。

(早く登らないと今日のうちに下山してうちに帰らないと行けないから・・)

もし誰かと一緒に登っていたら、その日のうちに下山をすることにこんなにもこだわってなかったかも知れない。

もっと客観的で柔軟な考え方ができたかも知れないとこのブログを書きながら今更ながらそう思う。

ほんとんどの人が8合目で宿泊

8合目は宿泊もできる大きな山小屋がある。食事だけでなく、予約を入れていた登山客が大勢中に入っていった。

山小屋で売られている普通のラーメンがびっくりするような値段だったのを覚えている。

そりゃそうだ。水やら材料をこんな高いところまで持ってこないといけないわけだから。

大勢の人たちはここで泊まって夜中の2時頃からまた登り始め、頂上でご来光を見る。そんなコースの人が多いと知った。

(ゆっくりしてられない・・早く行かないと日が暮れちゃう)

変な焦りを感じ始めていた。

9合目へ

そしていよいよ9合目に向かって歩き出したのはいいが、たくさんいた登山者がチラホラと数えるほどしかいなくて急に不安が増した。

(あれ?あんなに大勢いたのになぜ?)

なぜ?という疑問はきっと8合目で泊まる予定の登山者側の方だろう。「なぜ夕方に頂上へ行くの?」と。

勾配はMAXにきつい。酸素は薄い。もはや修行。

振り絞る体力で何とか9合目に到着。

ゴツゴツとした岩ばかり。草も生えてない。視界の半分は斜めの大きな岩山とオレンジ色の空だけ。

人の会話も聞こえない。カラスの鳴き声もない。シーンとして不気味な静けさ。

9合目にも小さな山小屋があった。

ちらほらだった数少ない登山者はそこに入っていった。

そしてゆっくり休憩もしないでクタクタな体を起こし、とにかく増していく焦りからすぐに上へ向かった。

(早くしないと日が暮れる・・)

そしていよいよ頂上へ

あれ??

登る人が誰もいない。

あのちらほらと数えるほどしかいなかった登山者は9合目で夜を過ごすらしい。

頂上を目指すのはたった一人、私だけだった。

つづく

(もっとコンパクトに書くつもりが、いろいろ思い出してしまってまた続いちゃいました・・スイマセン💦)

前回の記事↓

富士登山 2

富士登山 2

思いつきで決めた登山道

前回のつづきです。

早朝の西武線、そして中央本線に乗って大月駅まで約2時間半、3時間くらいかかったと思う。

そこからバスで富士五合目へ。

なぜ静岡側の御殿場からではなく山梨側の大月を選んだのか。

選んだ理由も深い理由はない。

ただ中央線の方が馴染みがあったから大月を選んだのです。

静岡側、山梨側とそれぞれの登る景色や山道を調べたりとか、そんな下調べもしないで全て何となくの思いつきで決めたわけです。

山の怖さは天気の急変

そして、さぁ登るぞと思った時刻はすでに11時近かった。

五合目はほとんどが岩山。

後に登り始めた登山道が初心者向けと言われている吉田ルートだとわかった。(結果的にそこでよかった。そのことすら調べていなかった)

注意書きには、落石の原因になるので石を投げたり蹴ったりしないでくださいと張り紙があった。

五合目登山口の横に神社があって無事を祈って参拝し、いよいよ開始。

同時間に登る登山客数はけっこういて、皆お喋りしたり撮影したりワイワイ。

登る者と下山する者とすれ違うときは「こんにちは」と声をかけ合っていて登山のルールみたいなものがあるんだと少し驚いた。

私も小さな声で「こんにちは・・」と。

6合目まで1時間もかからなかったように思う。しかし6合目に着いた時けっこうきつくて休憩所のようなところで杖を購入。

6合目でこんなに疲れてしまって、しかも今日のうちに頂上へ行ってそして下山して東京へ帰る計画にちょっと不安になった。

そして後に、ここの休憩所で買ったこの杖がとても役に立ったのはもちろん、命の恩人ならぬ恩杖となった。

6合目から7合目・・だんだん岩も大きくなっていて山の勾配も急で同時刻に登っている人たちからもお喋りが消えて無言になっていた。

すると山小屋の人なのか誰なのかわからないけど男性の声で「もうすぐ大きな雲が来るから急いで上に登ってください!」と。

横を見ると大きな大きな黒い雲がだんだんこっちに向かってくる!

(え!この雲が来たら一体どうなるっていうの??え?え?)

とにかく急いで岩をよじ登って上へ向かう。

下の方で誰かが「もう登れない・・無理よ無理」「がんばれ!」と声が聞こえた。

またさっきの男性の声で「早く、早く上へ行ってください!」と。

黒い雲をあんなに真横で見たのは初めてでとても不気味で怖かった。

なんとか必死に登って雲から逃れることができた。

しばらくするとその雲から逃げ遅れた人が7合目に到着してその姿を見たら全身びっしょり。風と雨がすごかったらしい。山小屋のベンチで着替えたりタオルで頭を拭いたり横たわったり疲れ切っていた。

山って怖い・・・。その時思った。

私は軽装、しかも着替えすら持ってなかったからその嵐に巻き込まれていたら大変なことになっていた。

そんな黒い雲の上空は真っ青な天気。

今下界では大雨降ってるんだなぁと、自分だけ徳をしているようなそんな気分だった。

雲がなくなると山梨県が一望できて、その景色の美しさときたら。

富士山の大きな三角の影が山梨県を覆っている。山梨県の人々は今富士山の影に覆われていることをわかっているんだろうか、なんて思い、そしてその壮大な景色を岩の上から仁王立ちして眺め、まるで世界征服したかのような錯覚すらした。

あれは忘れられない素晴らしい景色だった。

「来てよかったーーー」と、岩に座って持参のおにぎり食べながらその時まではそう思っていた。

つづく

前回の記事です↓

富士登山